ブルックナー/メモランダムⅦ④ ーF.コンヴィチュニー

 フランツコンヴィチュニー (1901-1962年) Franz Konwitschnyは、東ドイツで活躍した指揮者いまは、息子の演出家ペーターコンヴィチュニー(※)のほうがはるかに有名のようだが、ことブルックナーの演奏に関する限り、父フランツの残した名演は語り継がれるものである。

 フランツコンヴィチュニーは、ブルノとライプチッヒの音楽院で学び、はじめはヴィオラ奏者となる。1927年に指揮者としてデビューしドイツ各地の歌劇場で活躍、49年にゲヴァントハウスの常任となり、1953ー55年にはドレスデン国立歌劇場、55年からは東ベルリンの国立歌劇場の音楽監督も兼ねた東ドイツでもっとも著名な指揮者であったといえよう。61年に来日するも翌年他界した。

 ブルックナーは4番ほか比較的多くの録音がある。その8番を聴く。名演である。金管が山脈の高度はあるが緩やかな稜線をトレースするように朗々と鳴り響く。実に雄々しく鳴らせている。原典版を使用しているが、解釈はオーソドックスでテンポは安定しており、多くの同番を聴いてきた者からすれば「重量感がある見事な演奏」というのが次の感想ではないだろうか。弦楽器は録音の関係もあるかも知れないが控えめな印象をぬぐえないけれど、アンサンブルはけっして悪くはない。聴けば聴くほどに納得できる手堅くも堂々とした演奏である。ブルックナー名指揮者の間違いなく一角を占める証左と言えよう。

(※)Peter Konwitschny:1945年フランクフルト生まれ。東独のハンス・アイスラー音楽大学で演出を学ぶ。卒業後は、ブレヒトの創設したベルリーナー・アンサンブルにて、20世紀を代表する演出家のひとりであるルートベルクハウスのもと、演出助手を務めた。1980年以降は、ドイツを中心にヨーロッパ各地の劇場で活動。現代の諸相を見事に切り取る先鋭的な演出で、賛否両論を生みながら、高いレベルの作品を生み出し続けている。なお、ドイツ音楽評論家らによって選出される「年間最優秀演出家」に五度選ばれている/http://d.hatena.ne.jp/keyword/を参照)

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